公立が躍進、京都の教育改革で何が起きたか



 

東洋経済オンラインより

大変興味深い記事が掲載されていました

福島県の教育委員会にも見習ってほしいところです

 

 今、教育の世界で注目される自治体がある。京都――。古い歴史を持つ街だが、任天堂、京セラ、日本電産等のテクノロジー企業が本社を置く街でもある。
1869年、全国に先駆けて小学校が設立されたという歴史があるが、近年はというと、長く公立高校は進学実績で苦戦していた。ところが、それが今変化している。いったい何が起きたのか。

■公立で起きた「堀川の奇跡」

京都は私学発祥の地と呼ばれ、東京と並んで私学が多いことで有名だ。その一方、公立高校はというと、進学実績などで私学に大きく水をあけられ、「国立大学に進学するなら私学に」といわれる時代もあったという。その京都で2002年に「堀川の奇跡」と呼ばれる現象が起きた。公立の市立堀川高校の躍進だ。前年度の国立大学への合格者数は6人だったにもかかわらず、この年一気に106人まで増えたのだ。

直近2016年度の進学実績(現役生のみ)は国公立大学129人(内、東京大12、京都大32、大阪大7、神戸大9)、私立大学183人(早慶7、関関同立92)となっており、現役東大合格者数は同校過去最多。公立高校における東大・京大の現役合格率は全国1位だ。現在では、スーパーグローバルハイスクール(SGH)とスーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定校ともなっている。

 同校の躍進の陰にはさまざまな取り組みがあったが、象徴的だったのは1999年に普通科と並んで「探究科」を設けたことだ。当時、京都市の教育長だった門川大作市長はこう話す。

 「探究科は、特別な受験勉強をする学科ではありません。生徒は自らテーマを決めて、研究していく。そこに京都大学の大学院生や教師がサポート役として入る。研究していくうちに、生徒の心が変化していく。高校卒業後も研究を続けたい。そのためには基礎学力が必要だし、設備の整った大学に通いたい。そう考えるようになる子もいます」

 探究科は「探究する力を育成する」学科で、具体的に育成しているのは「興味関心を持つ力」「課題を設定する力」「課題を解決する力」「他者に表現する力」。何を探究するかは、生徒一人ひとりが自分で見つけることになる。「探究基礎」という授業をカリキュラムに盛り込み、その授業では1年半かけて3段階の手順に基づいて進められる。

 最初に行うのは、探究の「型」(探究の進め方や表現方法)を学ぶこと。次に学ぶのが「術」(具体的な調査技法。実験・フィールドワーク・資料の見方など)。そして最後に「道」(実際に探究活動を進めることで普遍的な探究能力を高める)を学ぶ。情報取得の基礎学習から問題解決の体験を経て、論文作成に至るまでの取り組みを進めるというものだ。一般的な偏差値教育とは違う、個性的なアプローチだが、そのおかげで生徒は自分の探究心に沿って学び、その延長としての進学先を考えることができる。

 この探究科は現在の総合的な学習の時間のようなものといえる。今日21世紀型スキルと呼ばれるような、論理力、思考力、協働する力、リーダーシップ評価の「ものさし」が明確に存在しない中での、先駆けた取り組みだった。あくまでも生徒が中心で、周囲の大人は教えるのではなく、本人たちが考えるのをサポートする役目が大きい。当時教育長をしていた門川市長はこう話す。

 「1995年に起きた地下鉄サリン事件では、有名大学卒の容疑者たちが複数いた。それを見て、このような人たちを育てるような教育は絶対にしない。社会で何かしら人のために役に立てるような子どもを育てたい。子どもたちが30歳になったときにどのような生き方をしているか、それを考えながら教育していきたいと強く思った。堀川でできたことは、どこでもできると確信している」

■公立の小中学校の改革

 堀川の奇跡の後、京都では公立の小中学校の改革も進んだ。2004年に内閣府の構造改革特区制度を利用して「小中一貫教育特区」の認定を受けた地域において、小学校における英語科や小中一貫の読解カリキュラムを設け、小中の連続性を高め一貫教育の形をつくってきた。その結果、中学入学時に生活不適応を起こす「中1ギャップ」が緩和され、学力向上も見られたのだ。小中学校の改革の中で、特に注目したいのは御所南小学校だ。

 同小学校は1995年に5つの小学校が統合し誕生した学校。御所南小学校の開校当初は662人だった児童数は、2016年度現在はほぼ倍増の1254人。人気化で児童数が増えており、学校施設は手狭で教室数も不足していることから、2018年に「御所東小学校」が開設される予定と盛況だ。同小学校では、フィンランドの教育法を取り入れ、独自教科「読解科」を導入して課題解決能力等の育成に取り組んだり、地域との連携による総合的な学習の時間を柱とした教育課程に取り組むなど、先進的な取り組みが注目されている。同校では保護者・地域が学校運営に参加する「学校運営協議会」を設けたコミュニティ・スクールが特徴的だ。2002年に地域と連携して「学校の裁量権の拡大」や「地域の学校運営への積極的な参画」などをテーマとした実践研究を同校で開始。健康安全部会や文化部会といった学校支援活動を行う「企画推進委員会」を設置したり、「学校関係者評価」を取り入れた。その目的は学校と地域相互の評価を基に学校運営を改善することだ。このようなコミュニティ・スクールは、2016年度末現在では全市立学校・園の約9割にあたる239校園に設置されており、全国最多となっている。

 また学校運営協議会設置校では、10年以上前から教員公募制を採用している。異動や退職で教員に欠員が出た場合、学校は求める先生を市内の教員から公募することができる。候補者の面接には校長とともにPTAや学校運営協議会の代表も同席する学校もあるという。一般の学校現場では見られないほど関係者の参加意欲が高いと感じる。

 また、1週間5日間連続の学校参観日「自由参観」を設けた。授業参観というと、指定された半日や1日が通常だが、5日連続にすることによって親にとって参加しやすくなる。ほかでは見られない取り組みだ。小中学校の改革を経た今、御所南小学校、同校と同じ校区にある京都御池中学校、そして堀川高校に進学するのが公立では「エリート」、つまりアンテナの高い親がその学区に引っ越しをしてまでも子どもを入学させたいと考える進学先といわれるようになっている。

 堀川高校と並んで西京高校も進学校として知られるようになっている。2016年度の合格実績は、272人の卒業生の内、東大・京大が29人、北海道大学・東北大学・名古屋大学・九州大学の旧4帝大が62人等、京都府内の公立高校の中でもトップレベルにある。

■テクノロジーが教育に与える変化

 このように変貌を遂げる京都の教育だが、一部の学校の偏差値を上げたことだけが成果ではない。不登校児童生徒に対するICTを活用した学習支援も特筆すべき点だろう。

 京都府の公立小中学生で長期欠席者(年度間に30日以上欠席した者)は2015年度で3789人いるが、2007年度から、市立中学校に在籍する長期欠席の傾向にある生徒に、学校が教材を配信し、生徒が自宅で教材をもとに自学自習できるシステムを導入した。遠隔で学習指導を行うシステムが有効に機能すれば、一人ひとりの子とより向き合うことが可能になるだろう。京都の児童生徒へのパソコン整備は児童生徒5.4人に1台と、政令指定都市では2番目、100万人を超える政令市では最も充実した台数を配備。2016年度から全小中学校の普通教室および全小学校のコンピュータ教室にタブレット型PCの整備を進めるなど、地道な取り組みも背景にはある。約20年前に始まった、偏差値教育とは縁遠い「探究科」を設置するという取り組み。そして、地域ぐるみで課題解決に取り組む姿勢は、京都ならではのものだ。2020年に小中高の次期学習指導要領が改訂され、小学校で教える内容が増える。たとえばプログラミング教育が始まるほか、5、6年生では英語が必修となる。ただでさえ教師の多忙が深刻化する中、自治体として何を重視し、取捨選択していくか。京都の取り組みには参考になるところがあるはずだ。

小宮山 利恵子 :リクルート次世代教育研究院 院長

 

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