2022/08/25
ネットでこんなニュースを見つけました
やっぱり中国はすごいですね、
受験戦争にしても日本とは比べ物になりません
中国の受験戦争に比べたら、
日本の受験はまだまだ易しい方かもしれません
と、思って頑張ってみませんか?
田中淳
Text by Jun Tanaka
人生の大一番で予期しない不運に見舞われ、涙を飲む──そんな“悲劇の受験生たち”が、中国で注目を集めている。というのも中国では先日、年に一度の全国統一大学入試(通称「高考〈ガオカオ〉」)が実施されたばかりだからだ。今年の出願者数(1031万人)は2008年(1050万人)に次ぐ過去2番目の多さで、難関ブランド校を目指す受験生たちが熾烈な闘いを繰り広げた。
「死ねば存分に眠れる」
中国では隋の587年から清の1905年まで1300年間にわたり「科挙」と呼ばれる官僚登用試験があった。科挙は3年に1度、四書五経(儒教の中で最も重要な9つの典籍)を諳(そら)んじ、詩歌にも優れた秀才を30名ほど合格させる制度。時代によって異なるが、合格倍率は数百倍から3000倍に達したことが記録に残っている。
翻って今。「現代の科挙」「世界最難関の大学入試」とも呼ばれる高考(普通高等学校招生全国統一考試)は今年、6月7~9日に行われた。中国では日本と異なり大学ごとの試験は行われず、この高考の結果だけが大学入試のほぼすべてを左右する一発勝負となる。しかも、日本の大学入試センター試験の出願者数が今年、約58万人だったのに対し、高考は1031万人。中国の人口が日本の約11倍である点を考慮しても、凄まじい数と言うほかない。
中国は日本以上の学歴社会で、出身校によって就職やその後の人生が確定してしまう傾向がまだまだ根強い。しかも、約1300校ある4年制大学の教育水準は千差万別で、どの受験生も北京大学、清華大学、中国人民大学、復旦大学といった政府認定の超難関校「国家重点大学」88校を目指す。
入学難易度を「当該大学の新入生数÷全国の受験者数」で単純計算すると、東京大学の新入生はだいたい220人に1人だが、北京大学は6000人に1人。狭き門どころの話ではない。しかも高考は一発勝負ゆえ、「滑り止めを数校受ける」といった選択肢はないのだ。
中国の子供は小学校に入学したその日から否応なく、11年後の高考に向けた猛勉強の日々が始まる。小1から容赦のない宿題漬けで、いわゆる部活動のようなものもなく、高考の必修科目である英語、数学、国語偏重の詰め込み教育が続く。受験生は高校3年に進級すると毎日6時から24時まで、週末も含めひたすら勉強、勉強、勉強の日々を送る。そして学校や塾の構内、受験関連サイトでは──
「只要学不死、就往死里学(勉強のしすぎで死ぬことはない、死ぬほど勉強せよ)」
「生時何必久睡、死後自会長眠(寝るヒマなどまったく不要だ、誰もが死後は存分に眠れるのだから)」
「累死你一個,幸福你一家(キミひとりが死ぬほど努力すれば、キミの一家全員が幸せになれる)」
「提高一分、幹掉千人(点数を1点多く獲得するたびに、ライバル1000人を打ち負かせられるのだ)」
「流血流汗不流泪、掉皮掉肉不掉隊(涙をこらえつつ血と汗を流せ、肉や皮が削げ落ちても落伍することはない)」
「只有流過血的手指、才能弾出世間的絶唱(指から血を流した者だけが最後、高らかに勝利の指パッチンができる)」
「進清華北大、主席総理称兄道弟(清華大学や北京大学に入学できれば、国家主席や首相だってキミの兄弟だ)」
……といったスローガンが躍り、ひたすら彼らを鼓舞して(追い詰めて?)ゆくのだ。
難問に悶絶した受験生
ゆえに、高考に臨む受験生のストレスは限界に達している。
河南省鄭州市では初日の6月7日午後、数学の試験が開始されてから10分後に「あああああダメだ……」と音を上げた1人の男子受験生が、試験官に途中退出を申し出た。
だが問題の漏洩を防ぐため、いったん試験問題を目にした受験生は、いかなる理由であろうと試験が終わるまで会場の外に出ることができない。
試験官に制止された彼は精神が限界に達したのか、建物の外に飛び出すや否や激しく大笑いしながら床に突っ伏して号泣。気を失ってしまう。警備員らに抱えられ教員室で横になった彼は、駆け付けた両親とともに試験終了を待ってグッタリしながら家路についた。
ちなみにニュース番組では識者がこぞって「今年の数学の問題は、かなり風変わりで難題だった」と語っていた。
“魔”のエレベーター
EDITORS’ PICKS「夫婦の平等」を願う男性記者が“実験”で突きつけられた厳しい現実元NSA職員に自分のiPhoneを調べてもらったら…個人情報がダダ漏れだった!スウェーデンから見た「日本のサステナブル度」は何点?
また山東省では、同省済寧市梁山県の男子受験生6人が運悪くエレベーターに閉じ込められ、試験に間に合わなかった悲劇を同省の夕刊紙「斉魯晚報」が伝えた。
同紙によると不運の6人は、高考の試験会場から約800メートル離れたチェーン系エコノミーホテル「都市118酒店鳳凰城店」に宿泊。彼らは6月8日15時から始まる英語の試験に臨むため、14時15分にホテルの部屋を出た。
だが不運にもエレベーターが故障し、カンヅメにされてしまう。彼らは緊急連絡用ボタンを押してホテルに救援を要請。14時20分ごろ、6人は「高考に間に合わない!」「助けてくれ!!」と自撮りした動画を母校・梁山県現代高級中学のSNSグループに投稿し、それを見て驚愕した担任教師は警察とともにホテルへ向かった。
14時27分、6人のうちの1人がスマートフォンで公安警察へ救援を要請。13分後に警察と消防の応急救援大隊が到着し、6人は閉じ込められてから40分後に救出された。そのままパトカーに分乗した6人は1分後に試験会場の門をくぐったが、受験生は14時45分までに入場しなければならない規定がある。
彼らは結局、試験は受けられず、翌日、6人は家族とともに梁山県教育和体育局へ出向き再試験を要請するが、応対した役人は申し訳なさそうに「いかなる特例も認められていず……」と繰り返すばかりだった。
憤懣やるかたない6人と家族は、ホテルに対し慰謝料と一浪期間中の補償として、1人当たり20万元(約320万円)を要求。これに対しホテル運営会社の山東星輝都市酒店管理集団は「当方から1人2万元のお詫び金を提示したが、突っぱねられた。20万元は多すぎだ……」と困惑の体を隠さず、話し合いを進めていると述べた。
市民からはホテルの対応に非難が殺到した。6人はエレベーター内から「119番へ電話し、応急救援大隊を呼んでくれ」と要請したものの、ホテルは「10分以内に修理工が駆け付けるから」「あと5分待って」「もうあと5分で来る」などとのらりくらり言い逃れ、結局、119番に連絡しなかったからだ。
多くのネットユーザーは「消防なら必ずエレベーターの扉をこじ開けて救出するはず。そうなれば後でエレベーターの交換費用が発生するため、コストをケチった対応」とみている。
母は高考より重し
「高考可以重来、媽媽的生命只有一次(高考はまた受けられるけど、ママの命を救えるのは一度だけ)」──。
そう言って高考の受験を断念したのは、河北省衝陽市に住む趙思琦(ヂャオ・スーチー)。ニュースサイト「澎湃新聞(ザ・ペーパー)」によると、彼女は高考に向けて万全の態勢で準備を進めてきたが、3月に母親が急病で入院してしまう。当初、父親は娘の受験に差し障りがあると思い、思琦に具体的な病状を隠していたが、「急性白血病」と診断された母親の容態は、急速に悪化の一途をたどる。
意を決した父親は思琦にありのままを説明し、沈鬱な表情で「骨髄移植をしないと助からないらしい」と吐露。幸い、思琦と母親のHLA型(白血球の型)が50%の確率で一致したことから、思琦は目前に迫っている高考の受験を断念し、母親のドナーとなって治療を助けようと決意した。
手術は無事に成功したものの、一家には90万元(約1400万円)の治療費が重くのしかかった。この件を伝え聞いた公益団体の河南慈善経済総会は、一家のために義援金を集めると表明。さらに地元の衝陽市教育局も思琦に対し「(手術や入院で受験に必要な登録手続きを済ませていないが)特例で受験を許可する」と連絡してきた。だが彼女が術後の体調回復が思わしくないこともあり、当局の提案を丁重に辞退したという。
地元紙の記者から「高考を断念したことに後悔はないのか?」と尋ねられ、静かに「ママの命を救えるのは一度だけ」と返した思琦。彼女の言葉は流行語として急速に拡散され、多くの人民の共感を集めた。
いずれにしても今年の高考で悲劇に見舞われた彼らには、めげずに来年、臥薪嘗胆してもらいたい。高考の受験資格は全日制の高級中学(日本の高校に相当)卒業か、同程度の学力を有する中国人であれば年齢を問わず誰でも受験できる。
四川省綿陽市では今年、妊娠30週目の26歳妊婦も高考に参加した。2015年に四川外国語大学を卒業した彼女は昨年、結婚したが、婚家の誰もが医薬系の大学を卒業しており、家族の希望で医科大への進学を決めたという。7月22日が出産予定日のため、当局は不測の事態に備え、試験会場に胎児超音波心音計などを備えた救急車を配備した。
「一生に一度の一発勝負」と言われるが、浪人生も年々増加しており、やり直しは効くのだ。