2022/08/25
出題者は、現代と同じ意味では通用しない単語に傍線を引いてくる。現代語と同じ表現であるのに現代語の感覚とは逆の意味あいをもつ古語がいくつかある。こういう単語が文中に出てきた場合、当然、出題者はこの単語を使って設問をつくりたくなるはずである。
ここでとりあげる 「なかなか」 は、そのなかでも文中に頻繁に現われ、しかも解釈のポイントになる重要な単語である。「なかなか」が出てきたら、とにかく「かえって」 か 「中途半端で」 と訳すことだ。
例題 東京大学(理)
〔問〕「なかなかうち向ひては思ふほども続けやらぬ心の色も表はし」の解釈としては、次の1~4のうち、どれが最も適当か。一つを選べ。
1 向かいあっていてはかえって十分に口に出して言えないものの、表情ではわかる心の色あいをも表わし、
2 向かいあっていたのではなかなか十分にうちあけることもしにくい、恋の思いをも表わし、
3 さし向かいではかえって思っていることも十分に言いつづけにくい、心の微妙な点をも表わし、
4 向かいあって思うように十分に話しつづける機会もなかなかない、心の秘密をも表わし、
正解は、もう1か3しかない。ここで、選択肢4に目を向けると、「十分に話しつづけ」が3の 「十分に言いつづけ」と意味的に近く、同じく
4の 「心の秘密をも表わし」と3の 「心の微妙な点をも表わし」が、同義文的で意味ありげだ。本命は3で正解も3。