2022/08/25
作者がほんとうに言いたいのは具体的事実ではない
説話や随筆は、具体的な事実を通して、読者に何か言おうとしている読み物です。この具体的事実のほうは、本文からなんとなく読みとれるものです。そこで出題者は 「本文の主旨に合致するものを選べ」という設間で、本文に書かれている具体例をそのまま引っぱってくる。すると受験生は「これは たしか本文にあったな」と、まんまと出題者のワナにひっかかるのですが、作者がほんとうに言いたいのは、具体例の裏に流れている一般論なのです。「本文の主旨は一般論ほど正解になりやすい」というのがぽいんとです。
例題
問 本文の主旨として適切なものを、次のなかから選び出せ。
ア 為秀の歌と杜子美の詩には、出題や表現において共通するものがあるということ。
イ 了俊が一字一句をもゆるがせにせずに歌を理解し、また詩を正しく点じ直したということ。
ウ 歌や詩はわずかな表現のちがいによって、まったく面目を一新するものであるということ。
エ 歌や詩は余情が大切で、とくに雨を素材とする場合にはいろいろと工夫すべきであるということ。
この四本の選択肢を見てみると、アとイは実例をテーマに、ウとエは明らかに一般論をテーマにしています。設問は主旨をきいているから、 一般論が書かれているウとエが意味ありげです。そのうえでウとエのどちらをとるかは、アの 「出題や表現において共通」とウの 「表現のちがい」が反意文的で、ウのほうが重いということになります。よって本命 はウとなり、実際の正解もウです。