2022/08/25
前回に引き続き、アクティブラーニングに関する中沢良平氏のご意見を紹介します。
今回も「言論プラットホーム アゴラ」からの引用です。
アクティブ・ラーニングが子供を「虐待」する
算数の解法の「奇習」
茂木健一郎氏がまた日本の教育に怒っておられています。小学校の算数にまかり通っている「奇習」は、子どもたちに対する「虐待」であると題するご自身のブログです。
昨日、小学校の算数のテストで、「3.9+5.1=9.0」と書いたら、減点されたというツイートが流れてきて、とてもびっくりした。これははっきり言って一種の子どもに対する「虐待」である。これ以外にも、小学校の算数には謎の奇習があると聞く。
そう奇習なのです。
このような奇習がなぜまかり通るのでしょうか。それは、規律の問題です。ある些事を取り上げて、児童生徒の「間違い」を糾弾します。このことによって、彼らを委縮させ、管理しやすくするのが目的です。算数の正確な理解など、二の次です。それはマインド・コントロールに近い。というよりも、学級経営がうまいといわれる先生は、皆この手のコントロールに長けています。学校全体で、規律を維持するために、運動会や儀式的行事が用意されています。何時間もかけて、数百人で同時にお辞儀ができるようにする練習を見て、外国の方などどう思うのでしょうか。
教育界のバズ・ワード アクティブ・ラーニング
本題にはいります。中央教育審議会は「質的転換答申」において
従来のような知識の伝達・注入を中心とした授業から、教員と学生が意思疎通を図りつつ、一緒になって切磋琢磨し、相互に刺激を与えながら知的に成長する場を創り、学生が主体的に問題を発見し解を見出していく能動的学習(アクティブ・ラーニング)への転換が必要である
と指摘しています。アクティブ・ラーニングは、日本語にすると「能動的学習」と訳されます。 つまり、学ぶ姿勢や態度が受動的ではなく能動的だということです。授業者が一方的に学生に知識伝達をする講義ス タイルではなく、課題研究や、ディスカッション、プレゼンテーションなど、児童生徒の能動的な学習を取り込んだ授業を総称します。
アクティブ・ラーニングを支持する人は多いです。それは「個性を伸長する教育は素晴らしい」とか「みずから学ぶ姿勢はかけがえがない」ということといっしょで、まったく正しいです。しかし、これが今現在の現実の学校教育に適用されるとなると、どうなるのでしょうか。
学校の理想は、上の写真によく表れています。このような教育が、理想の学校教育です。アクティブ・ラーニングをやったとしても、このような授業になる可能性がひじょうに高いと思います。教師のもっている「正解」にむかって、子供たちが議論を組み立てていくということになります。形式上は、アクティブ・ラーニングですが、子供たちは、教師の顔色を見て、発言することになります。そんな「主体性」を人々は歓迎するのでしょうか。
教育は、マインド・コントロールに似てる
現状でアクティブ・ラーニングを推進すれば、こんな悲劇が待っているかもしれません。これは旧ソ連が捕虜のアメリカ軍人をコントロールするために行った所作です。
次の局面は、完全な支配とコントロールを達成する局面だ。それを達成するための巧妙なテクニックの一つは、答えを教えないことである。たとえば、政治犯や思想犯の場合、自分がどういう罪状で告発されているか、決して教えてもらえない。(中略)一体どのことが、自分の犯した「過ち」なのか、相手がどこまで知っているのかわからないままに、曖昧な事実や自己弁護的なことを書くと、目の前でビリビリに破られ、もう一度書き直すように言われる。どこがダメなのかも一切教えてはくれない。(中略)内容に嘘や自己弁護があると、失禁するまでトイレに行かせてもらえなかったり、何時間も手を挙げた格好で立たされたり、プライドを打ち砕くような蔑みの言葉を散々投げつけなれる一方で、自分の非を率直に認める発言をしたときには、賞賛され、たばこやコーヒーをもらえたりすることもある。何度もそうしたことを繰り返すうちに、書いている方は、何が事実であるかということはどうでもいい問題になり、相手に気に入ってもらえるには、何を「告白」すれば良いかということばかり考えるようになる。相手の微妙な反応のちがいから、相手が何を求めているかを読み取り、進んでそれに合わせたことを書くようになる。(岡田尊司 マインド・コントロール)
そんな中、長野県伊那市立伊那小学校教諭が準強姦容疑で逮捕されるというニュースが入ってきました。ここは子供たちが自主的に山羊や豚を飼ったりと、昔からアクティブ・ラーニングをしている教員なら誰でも知っているとても有名な老舗です。そのせいで、先生のほうがアクティブになりすぎたのかしら。
なお、中沢良平氏によるその他の記事はこちらからご覧いただけます。
http://agora-web.jp/archives/author/nakazawaryohei